マレーシア出身のネルソン・ホーは、2022年に多摩美術大学日本画専攻を卒業。
在学中は、アーティストとしての自分の声を表現するための完璧なツールを見つけるべく、あらゆる種類のメディウムを探求。その中で、古代人がメッセージを伝えたり、当時の事件を記録するために残した壁画に用いた岩絵具を、人類と自然との原初的なつながりのようなものだと捉えた。そして、うつ病やLGBTQに対する差別など、現代社会に渦巻く問題を記録するツールとして岩絵具を使うことができたら面白いのではないかと考えるようになった。
卒業制作では、封筒を使って自分の声を表現。 封筒は言葉の輸送手段であると同時に、非常に個人的で親密なものであり、メッセージを受け取るためには広げて覗き込む必要があるものだからだ。
ホーは、アートは人々を感動させ、新たな疑問を引き起こし、好奇心、興奮、怒りを引き起こすユニークな位置づけであると信じている。それゆえ、ホーの作品はあえて「個人的な」コンテンツを露出させ、人々にそれを覗き見させる。制作にあたり、自身の作品をエンパシーを映し出す鏡として捉え、それがアーティストとオーディエンスの双方に新しい発見とつながりをもたらすことを願っている。
© ネルソン・ホー