Exhibitions

 

伝統と現代が交差し、都市の狭い空間での生活が越境者の視点から描かれる。東京という現代都市は、大小さまざまな「箱」のような空間で構成されており、人々はその中で移動し、生活している。毎朝、マンションや家から出発し、バスや電車を利用して会社や学校に向かう日常の流れ。その過程で出会うマンション、バス、電車、会社や学校などの空間は、まるで「箱」のように感じられる。

日常の中で感じる微細な感情や瞬間が、こうした箱の空間にどのように映し出されるかが記録されている。都市の狭い空間が生み出すリズムと、そこに流れる感情の動きが、和紙や墨、岩絵具といった伝統的な日本の画材を用いて絵画として表現される。

各「箱」の中にはそれぞれのストーリーが訴えかけており、孤独や記憶は感情の凝縮として描かれる。

Artists

チャン・ジンウェン

チャン・ジンウェンの作品は和紙 、墨 、水干 、岩絵具など材料による無機質な風景を描写し 、現代人の 「孤独 」 、「記憶」、「コロナの不安感」などの感情を伝えたいと思っている。現在、彼女は主に窓と部屋をモチーフにして作品を制作している。

窓の作品を描き始めたきっかけは三木清という作家の言葉に出会ってからであるらしい。 その言葉は「孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間 の「間」にあるのである。」だった。チャンはそこからインスピレーションを得て、東京のマンションと窓のモチーフを用い、作品を制作している。窓は彼女にとって人々の出口と入口を表すものであり、そのひとつひとつの窓にストーリを持ち、それぞれには記憶、孤独、不安などの感情が集まる場所だと考えている。そして毎日、見慣れた景色、教室や部屋の隅などの場所では、人がいなくても、見えない記憶や感情が存在していると考えている。さらに、チャンは空間の閉鎖的な構図を利用して、物語が溢れるような場面を作りたいと思っている。