Exhibitions

 

GALLERY ETHERでは、2024年09月21日(土)から10月12日(土)の期間にて、「KYOBASHI ART WALL」第4回優秀作品にも選ばれたマレーシア出身のアーティスト、ネルソン・ホーと、東京出身のグラフィティアーティスト、いけたくによる二人展「B!OOM 咲く」を開催いたします。

多くのアジア諸国では、個人の感情表現を抑えるように文化的な訓練がされており、怒りや悲しみのような自我に中心を当てた強い感情は、常に社会的調和や秩序を阻害するものと見なされ、抑圧されることが多くあります。しかし、感情は封じ込められるものではなく、これらの感情を適切に消化するツールや方法がなければ、やがて爆発し、人々の行動に有害な影響を及ぼすことになります。

本展のタイトル 「咲く(ばく)」は、「咲く」と「爆」をかけた言葉遊びです。怒りというと、攻撃や悪態といったネガティブな印象を連想する人が多いですが、怒りとは、痛みや愛情などの下層にある感情を理解するための防衛機能として働く感情でもあります。

「B!OOM 咲く」は、グロテスクな彫刻とは対照的な芝生を用いるいけたくのアート思想と、絵画やインスタレーションを通して物語を語るネルソン・ホーのアート表現を組み合わせ、「本当の意味での「怒り」とは何か」を観る人自身が見つめ直すためのオアシスになっています。

悼みは種であり、怒りは爆発的に花開き。

Artists

いけたく

いけたくは、グラフィティをルーツに自分や、自分を取り巻く環境に対するフラストレーションをポップに表現している。グロテスクでありながらもポップな作風を意識しており(グロテスクポップ)立体をメインにイラスト、平面作品など、幅広いメディアや表現から「日本人の本音と建前」をテーマに活動している。

Z世代として生まれた彼は、日本社会の不安定な時期を経験する中で、将来に対する不安や自然災害の恐怖を感じている。その透明な恐怖に反発するように、アグレッシブでグロテスクな作品を制作している。それは理不尽な事象に対する反抗精神であり、心の奥で抱える不満や陰鬱とした雰囲気を壊すという内側から湧き出るバイタリティによるものである。

この抑圧された社会に対する不満や怒りを抱えつつも実際に行動へ移すことのない日本人のサイレント・マジョリティに対する皮肉を込め、グロテスクでありながらもどこか可愛くアメリカンポップアートをリスペクトした作風にしており、これは彼がポップアートを建前とし、グロテスクな部分を人の中身(本音)として捉えているからである。

いけたくはSNSの発達や、多様性に対する意識が発展していく中で、発言や対話を臆する人が増えたように感じている。それをデジタルではない立体作品という実存する媒体を使用して鑑賞者との対話を試みたいと彼は願っている。

ネルソン・ホー

マレーシア出身のネルソン・ホーは、2022年に多摩美術大学日本画専攻を卒業。

在学中は、アーティストとしての自分の声を表現するための完璧なツールを見つけるべく、あらゆる種類のメディウムを探求。その中で、古代人がメッセージを伝えたり、当時の事件を記録するために残した壁画に用いた岩絵具を、人類と自然との原初的なつながりのようなものだと捉えた。そして、うつ病やLGBTQに対する差別など、現代社会に渦巻く問題を記録するツールとして岩絵具を使うことができたら面白いのではないかと考えるようになった。

卒業制作では、封筒を使って自分の声を表現。 封筒は言葉の輸送手段であると同時に、非常に個人的で親密なものであり、メッセージを受け取るためには広げて覗き込む必要があるものだからだ。

ホーは、アートは人々を感動させ、新たな疑問を引き起こし、好奇心、興奮、怒りを引き起こすユニークな位置づけであると信じている。それゆえ、ホーの作品はあえて「個人的な」コンテンツを露出させ、人々にそれを覗き見させる。制作にあたり、自身の作品をエンパシーを映し出す鏡として捉え、それがアーティストとオーディエンスの双方に新しい発見とつながりをもたらすことを願っている。